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遺言書はこれで作成できる!<書き方・手順・注意点>

ご自身に万一のことがあっても遺言書を作成しておくことで、相続にまつわるトラブルや、ご遺族の精神的・経済的負担を未然に防ぐことができます。この記事では、遺言書の作成について必要な情報をまとめました。

相続のもめ事を軽減する遺言書

遺言者の死亡により、遺言書が法的に有効になります。自分の死後に相続をめぐるもめ事が起きないようにしたいときなどには、遺言書の作成が有効です。

遺言書で伝えたいこと(目的)を決めよう

遺言書はご自身からご家族への意思表示であり、言い方を変えれば愛情を形にして伝えるラブレター(申し送り事項)でもあります。
残されたご家族が困らないよう遺言書で伝えたいことを、以下の3点を念頭に決めましょう。

  1. 財産を残す人の意思を実現する
  2. 相続のトラブルを避ける
  3. 相続の手続きをスムーズにする

目的がはっきりしていない方は、こちらの事例を参考にしてみてください。

 

遺言能力

遺言は満15歳以上でかつ、意思能力があれば誰でも作成できます。

 

遺言の3種類

遺言には以下の3種類があります。

  • 自筆証書遺言・・・すべて自分で作成する
  • 公正証書遺言・・・公正証書として作成する
  • 秘密証書遺言・・・内容を秘密にしておきたい 

上記の比較は次表のとおりになります。

種類

自筆証書遺言

公正証書遺言

秘密証書遺言

作成方法 原則として本人が遺言の全文・年月日・氏名等を書き押印。

パソコン、録画、代筆不可。

本人が口述し、公証人が筆記する。

必要書類

・印鑑証明書
・身元確認の資料
・相続人等の戸籍謄本、登記簿謄本など

本人が遺言書に署名・押印の後、遺言書を封じ同じ印で封印する。公証人の前で本人の遺言である旨と住所氏名を申述する。公証人が日付と本人が申述した内容を書く。パソコン、代筆可。
作成場所 自由 公証役場 公証役場
証人 不要 証人2人以上 証人2人以上
署名・押印 本人 本人、公証人、証人 本人、公証人、証人
家庭裁判所の検認 必要 不要 必要
保管場所 自由 原本は公証役場で保管 自由
メリット ・簡単に作成できる
・遺言書の存在を秘密にできる
・自由に書き直せる
・公証人が作成するため身体的理由により文字が書けなくても作成できる
・紛失や変造の可能性が低い
・不備等で無効になることがない
・検認不要、すぐ相続手続きが可
・内容の秘密が守れる
・パソコン、代筆可
・費用が安い
デメリット ・紛失、変造、隠匿の可能性
・内容不備により無効となる可能性
・訂正方法が煩雑
・内容秘密にできない
・費用がかかる
・手続きが煩雑
・内容不備により無効となる可能性

 

自筆証書遺言の作成

自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自書しこれに押印することで成立します。
費用もかからず、遺言の存在、その内容を秘密にしておけますし、証人も必要とせずに自分で作成ができます。また、自由に書き直すことも可能です。
短所としては、法定の様式で作成されていなかった場合遺言書が無効となる場合があること、遺言書の紛失・偽造・変造・隠匿などの危険があること、家庭裁判所での検認手続きが必要であること、です。

 

1.「原則」全文自書する

パソコンなど機械を用いたものや、録音・録画は無効です。
自筆証書遺言に添付する財産目録(遺言者の財産一覧表)はパソコンのエクセル、ワードなどで作成してもよいですし、預金通帳のコピーでもよいです。(ただし財産目録の各ページに署名・押印が必要)
用紙が数枚になる場合には、ホチキス留めして割り印を押すなど全体で一つの遺言書であることが確認できればよいです。

2. 日付

作成年月日のない遺言書は無効となります。
「令和〇年2月吉日」という記載は、法律上日付の記載を欠くものとして無効になります。(民法968条1項)正確な日付を書きましょう。

3. 氏名

氏名の自書は、遺言者が誰であるか、および遺言が遺言者本人の意思に基づくものであるかを明確にするためです。
本人と同一であることが認識できれば、通称でもかまいませんが無用なトラブルを避けるために本名を記したほうがよいです。

4. 押印

遺言者本人の印であることが必要です。認印でも拇印でもよいですが、偽造や変造を避けるためできるだけ実印を用いることがのぞましいです。

5. 加除訂正について

遺言書は加除訂正が可能ですが、遺言書中の字句を訂正したり、文字を加除したりした場合には、偽造または変造ではないことを明らかにするため、民法上以下のことが規定されています。

「加除その他の変更」には必ず遺言者が変更の場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ変更した場所に押印しなければならない。

とあり、こうした方式をふまない加除訂正は無効になります。

 

遺言を書くまでの準備

 

上記遺言の作成をするまでの流れは以下のようになります。

 

遺言書で伝えたいこと(目的)を念頭に、

 

  1. 自分が所有している財産のリストを作成する

現金、預貯金、公社債、上場株式、土地、建物、車、ゴルフ会員権、宝飾品など。借入金(例:住宅ローン)などの債務も忘れずに

2.  財産を特定できる資料を準備する

預貯金の場合、「銀行名、支店名、口座番号」のリストあるいは通帳のコピー

不動産の場合、「登記簿謄本」

などをもとにまとめましょう。

3.どの財産を、だれに、どれくらい相続させるかを決める

4.遺言執行者(遺言書に基づいて円滑に相続手続きを行う人)を決める

遺言執行者を決めておくことで財産をスムーズに相続人等に承継させることができます。
財産を受け取る人の中から選ぶ(例:長男)か、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家へ依頼することもできますし、その両方の指定も可能です。
手続きには法的なものもあり、ご心配な方や、中立的な第三者に手続きをまかせたい場合は事前に専門家に相談してみましょう。

5.遺言を書く

「自筆証書遺言の作成」を参照。

・全文、日付(年月日)、氏名(戸籍に記されている正確な文字)を全て手書きにする
・署名・押印をする
・消せない油性のペンなどで書く
・相続させる者の氏名の後に生年月日を書く(例:〇山一郎(昭和〇年〇月〇日生))
(注)例えば「一郎」を「二郎」へと改ざんされるのを防ぐため

6.遺言書を封筒に入れて封印する

保管には十分注意が必要です

ワンポイントアドバイス

(法務局での保管制度スタート)
相続法の改正により、自筆証書遺言を法務局で保管してくれる制度がスタートしました。

詳しくはこちら法務局での保管制度でご確認ください。
この場合には封書せず、法務局に出向いて保管をしてもらうことになります。これにより、紛失・滅失、隠匿、改ざんなどのリスクを回避することができます。また、自筆証書遺言は家庭裁判所での検認(1~3カ月ほど。新型コロナの影響により場合によっては6カ月かかった例も)が必要でしたが、法務局に保管することでその手続きは不要となり、速やかに相続手続きをすすめることができます。

 

公正証書遺言の作成

公正証書遺言は以下の方式によって作成されます。

  • 証人2人以上の立ち合い
  • 遺言者が公証人に遺言の趣旨を口授する
  • 公証人がこれを筆記して遺言者および商人に読み聞かせる
  • 遺言者および商人が筆記の正確なことを承認して各自が署名・押印する
  • 公証人が方式にしたがって作成された旨を付記して署名・押印する

(長所)

遺言書原本が公証人によって筆記・保管されるため、紛失・偽造・変造・隠匿などのリスクはなく、最も安全確実な遺言です。また検認手続きも不要ですみやかに相続手続きが行えます。

(短所)

費用がかかる(遺産1億円で数万円程度)こと、手続きが煩雑であること、公証人および証人を必要とするので遺言の存在・内容を秘密にできないことなどがあります。

 

秘密証書遺言の作成

実務上はほとんど作成されないため、ここでは説明を省かせていただきます。

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